その一つが事(こと)という言葉です。物事という言葉はしばしば使っていて、そして物という言葉の意味もよく理解しているのですが、なぜか事(こと)という言葉の意味を最近まであいまいに理解していました。
家にある辞書の意味を書くと、
こと:「もの」が何らかの作用・機能・状態・関係などとして実現するありさまをいう語。「もの」が時間的に不変な実体のようにとらえられているのに対して、「こと」は生起・消滅する現象としてとらえられている。
とあります。簡単にいえば時間的に変化する事象のことを「こと」というと初めて明確に理解しました。
思い返せば、わたしは「もの」についてはかなりの執念をもって思考してきたり関心をもってきましたが、それに比べれば、「こと」に関しては、今までその意味を知らなかったように、それほどの関心をもっていなかったようです。
理系で物質について考えることが多かったり、あるいは数学のように物質について考えなくても、何らかの実体とそれを意味する概念について思考することが多かったのですが、一方、歌を歌うことはあったり映画を観ることはあったとしても、時の流れの中で演じられる変化するものについては、消えてなくなるものとして軽視していたのかもしれません。
私が神について考えるときも、不変の存在としてそれをとらえることが多く、また真理というものも時が経っても変わらぬものと同様に考えていました。つまり「もの」についてやはり考えていたのです。
しかし実際はこの世に存在するものは変化の程度はさまざまとしてもすべてが変化します。「こと」をないがしろにすることはできません。人間も絶えず活動をしています。神について考えるうえでも、すべてが神であるならば、すべての「こと」も神であるはずです。たとえば、人が何かを計画して何かを行おうとすること、これはひとつの「こと」ですが、このような人の意志も神です。目の前の人がたとえば自分にとって不快なことをしたとしてもです。
このことに気づいて、視野が以前に比べ少し開けてきたような感じがしています。これまでがもしかしたらバランスの欠けた世界の受け取り方をしていたかもしれないとすら思っています。
皆さんはどうでしょうか? 私は「もの」ばかり偏重してきましたが、「もの」と「こと」のどちらかにこだわることがあったでしょうか? あるいはどちらに対してもバランスよく配慮しながら生きてこられたのでしょうか? 多分人によって違いがあるように思うのです。