個性を育む

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Eugenia GZ

つい最近おもしろい本を読みました。『田舎のパン屋が見つけた 腐る経済』という本です。この本のまえがきで著者は『「腐らない」という現象は、自然の摂理に反している。それなのに決して腐らずにむしろどんどん増え続けるもの。それがおカネ。そのおカネの不自然さが、僕たちを「小さくてもほんとうのこと」から乖離させていく。』と書きます。著者の渡邉格さんは若いころいろいろ道に迷った末にパン屋さんになることを決意し、修行を積み、世界で初めて天然麹菌のパンを作られました。

 その彼がいっています。『「個性」というのは、つくろうとして作れるものではない。つくり手が本物を追究する過程で、もともとの人間性の違いが、技術や感性の違い、発想力の違いになってあらわれて、他とどうしようもなく違う部分が滲み出て、その必然の結果として生み出されてくるものだ。』

 日本には本当にさまざまなすばらしい人がいます。一部は有名になり多くの人に知られますが、そのすばらしさを知られていない人が結構います。わたしは新聞で人物を取り上げた記事を好んで読むのですが、日本にはすばらしい方々、個性をもった方々がたくさんいて、捨てたものではないといつも思います。捨てたものではないどころか、日本は多くの分野で世界を引っ張っていく可能性に満ちた国だと思いをしばしば新たにしています。

 少し前に「オンリーワン」という言葉がよく聞かれました。人は皆世界にただ一つの存在だということを強調した言葉です。多くの人の心を捉えた言葉ですが、多分ほとんどの人が自分の個性を開花させたいと思っているからこそ、こういう言葉が流行るのだと思います。

 個性というものは、少しばかり着るものにこだわったり、趣味にちょっとこだわりを持つことではないと思います。自分らしくあることは、渡邉さんの言葉だけでなく、自分の体験からも、簡単ではないと思います。

 個性に関して思い出す体験があります。それは文章を書くことです。正直言うと、私は学生の頃文章が上手に書けませんでした。ほかの人が読んでわかるような文章はかけるのですが、自分の気持ちを100%文章に表すことができず、いつも文章を書きながら、これは私の気持ちではないと感じていました。
 それがあるとき切羽詰って、内なる思いを表現したい強烈な衝動を感じました。がむしゃらにしかも真剣に書きました。学業をほったらかしにして、何度も何度も書き直しました。情緒が不安定になるほど、自分は何が書きたいのかを自分に問いました。できた文章はほんの原稿用紙20枚くらいの短いものでした。
 その何ヶ月かの過程を通じて、私は自分の文体を手に入れました。それ以来、自分の思いを文章に表すのが苦にならなくなりました。大抵のことは表現できます。それがいまこのブログに現れているものです。

 個性を引き出すことは簡単ではありませんが、とても大切なことではないでしょうか、そして、個性化を達成する力は皆に備わっているのではないでしょうか。最初は模倣から入っても、そこから抜け出し、自分なりの探究を行うこと、人工的な生活をより自然に寄り添った生活にすることで個性が開花しやすくなるように思います。

*" I'm not a woman. I'm a force of nature."-Courtney Love
 「私は女性ではありません。私は自然の力です。」(コートニー・ラヴアメリカの女優、歌手)