晩年のガンジーの生活は非常に質素なものでした。それは太古のインドの神聖な生活の一端を偲ばせるものでした。服装から食事、振る舞いのすべてが簡素であり虚飾のないものでした。そこには人生の真の豊かさがありました。
しかしその一方で、ガンジーの思索は非常に深いものがありました。彼は熟慮に熟慮を重ねたうえで行動を起こしました。彼の思いと言葉と行動は人々の心を打つものであり、それは、彼が人間に必要なものを知っていたからです。人間に関する深い理解なくして、人々のリーダーとなることはできません。私は彼の大きな特徴は、簡素な生活と高度な思索にあると思っています。
人生は結局は質が重要です。けばけばしいものは、ただ単にけばけばしいだけです。現代文明に生きる多くの人が量を追っていますが、質が伴わない限り、すべては水の泡のようにもろくも崩れ去るだけです。
このことに関してもう一人の実例があります。バイオリンの名器といえばストラディバリウスですが、これらの名器を作ったアントニオは非常に信仰心があり、神の満足するものだけを作ったそうです。経済性は無視し、顧客の満足を考えたわけでもなく、神の目に叶うものだけを作り続けたそうです。彼の作ったバイオリンは現在まで残り、そして未来も残り続けていくでしょう。
人間は自分が必要であると考えるものよりもはるかに少ないもので満足のいく生活ができます。生活に無駄がなければ、人は物事に関して深い思索を行うことができます。それが人生を豊かなものとしてくれます。現代文明を否定するつもりはありませんが、現代文明は人々の目を真の豊かさからそらさせています。