舌のコントロール

 五感は視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚です。人間はこの五感の誘惑に惑わされてしまいます。テレビや映画を見ているとそれにひきつけられる、おいしいものを食べているとどを越えてそればかり食べるようになる、などなど。何でもほどほどすなわち中庸が好ましいのですが、時にそれが難しいことがあります。ひどいと嗜癖へと陥ってしまいます。

 この五感を適切な範囲内にコントロールすることを五感のコントロールといいますが、もっとも重要なものが舌のコントロールだといわれます。舌をコントロールできさえすれば他の感覚は容易にコントロールできるようになると。食物のコントロールのことです。

 食物のコントロールについては以前書いたことがあるので今日は触れません。食物をとった後のことについて書いておきたいと思います。

 日本人の間には衛生の観念がまあいきわたっているのでたいていの人は歯磨きをしているようです。私は朝と晩に歯を磨きますが、きちんとしている人は毎食あるいは何か食べ物を口にした後は必ず歯を磨く人もいます。またただ単に歯を磨くだけでは十分ではなく、舌や歯茎を含めて口の中全体をいつもきれいにしていたほうがいいとしばしば聞きます。例えば少し前ですが、口の中に細菌が繁殖していると、関係ないようでありながら消化機能に大きな影響があるという医学報告を聞きました。それがひいては肉体全般の健康にかかわってくるとも。

 また味を味わう感覚器官としての舌ではありませんが、言葉を話す器官としての舌の重要性も語られます。

 他者とのコミュニケーションのかなりの割合を占める言葉。言葉をコントロールするということはコミュニケーションをコントロールすることにつながります。人は他者とのかかわりの中でこそ生きていけるので、言葉をきちんと丁寧にコントロールすることで人生をコントロールできます。人生の質の多くも言葉にかかっています。

 しかしながら経験からいうと、食物のコントロールも言葉のコントロールもこだわりだしたら奥深く、それ自体が一つの修行になります。楽しくもあるのですが、困難に直面することも多々あります。

 インドでは舌は知性が宿る器官だとされます。食物も言葉もその人の知性と深い関係があるということなのだと思います。