心の健康には体験が必要

私たちは、体の健康のためには、適度な運動を必要とします。金持ちは、おかかえ運転手付きの自動車で移動するかもしれませんが、まったく歩くことをしなければ、足腰は弱ってきます。健康を維持するために、人は歩かなくてはなりません。

心の健康を維持するには、どうすればいいでしょうか? 「見ざる、聞かざる、言わざる」の三猿の意味は、「悪いものを見ず、善いものを見る。悪いことを聞かず、善いことを聞く。悪いことを言わず、善いことを言う」ということらしいのですが、これは心の健康に役立つと思います。悪いものを見たり、聞いたりすると、心が惑わされ、そのことから離れられなくなり、悪い影響があります。悪いことを言うと、その結果について思い煩います。

また、心の健康のためには体験が欠かせないともいいます。人間は、いつも何らかの行為を行っています。呼吸や目の前にあるものを見ることなど、努力しなくてもできることもあれば、努力をしなければ行えないこともあります。それらの行いの結果を味わうことで人は健康になるといいます。

いつも行動せずに考えてばかりいれば、人の神経は衰弱してしまいます。思ったこと、考えたことを行動することで思考は解放されます。善いことを思い行動したら、その結果を味わって満足を得るでしょう。悪いことを考え行動しても、痛い目にあって、それが間違っていたことに気づくでしょう。心(マインド)には学びが必要です。

人間は行動の結果を味わうことで成長していくのだと思います。心(マインド)は行動のためにあります。人間は、内なる思考を行動を通じて体験することで自己に関する認識を深めます。自分を知るには、自分が考えていることを行動してみるのが最も簡単かもしれません。それは癒しではないでしょうか。

スポーツ選手は全力を尽くして競技します。負けると悔しく、勝つとうれしいでしょうが、スポーツの喜びや健全さは自分のプレーの結果を味わえることにあると思います。マラソンで世界記録を出せなくても、完走するだけで大きな満足が得られるのだと思います。

「知性の目的は人を健康にすることです」と言っていた人がいました。心(マインド)の健やかな発達のためには、心(マインド)を知性(あるいは良心・直感)に従わせることが大切なのだと思います。勉強ができるという賢さではなく、真に知性のある人の仕事や作品には人を健康にする働きがあるようです。